日本放送作家協会主催 作家養成スクール
二番目の女だったのです。三対三の合コンに来ていた女性陣の中で、本当はミユちゃんが好みだったのです。その次がこいつで、三番目は……忘れました。
でも他の男性陣もみんなミユちゃん狙いで、イケメンのサトシが彼女といい感じになったのです。そして二人はどこかへ消えていきました。自棄になって酒をしこたま飲んだ僕は、二番目のこいつを連れ出し、とあるバーに入ったのです。
暗い店内でした。テーブル席へ通され、正面に座ったこいつの顔は、暗さと酔いのせいか、少し色っぽく見えました。僕は水割りを、こいつはカクテルを頼むと、突き出しにハマグリが出されました。殻付きのまま日本酒で蒸した定番料理ですが、僕らの飲み物には不似合いだと思ったことをよく覚えています。
こいつは酔っているようで、フォークで殻から身を取るのに苦労していました。僕もかなり酔っていたので殻ごと手に持って食べ、それを見たこいつも同じように食べ始めました。
皿の中に一つ、殻の閉じたハマグリがありました。僕がこじ開けようとすると、こいつが止めました。こういうものは食べてはいけないと言うのです。でも僕は食べないまでも、閉じた二枚貝を見ると開けたくなる質なのです。フォークでグリグリやると開きました。
「あっ!」
僕らは同時に声をあげました。中から煙が出てきたのです。そしてその煙の全面に、白いドレスを着たこいつと、タキシード姿の僕が並んでいる映像が映し出されたのです。
幻覚を見るほど酔っていたことは否定しません。でもこれは間違いなく現実でした。こいつも同じ映像を見たのですから。
そして僕らはその映像に促され、一緒になってしまったのです。
昔、蜃気楼は巨大ハマグリが出す幻影だと考えられていました。あのハマグリも僕らを結びつけるために幻影を吐いたのでしょうか。だったらミユちゃんと結んで欲しかった……いえいえ、あれからもう二十年、今が幸せだから贅沢は言いません。二番目の女でも。
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