受講生の作品

大工の音松百薬に酒を勧める春の夜

小玉 朝子
総合コース専門コース
3期生(2017年度)
性別:女性

月刊「たる」2018年4月号27話

ここの長屋はさぁ、三味のおっしょさんに浮世絵の旦那に縫箔や錺職の職人、かみさん連中も口うるさいが気のいい奴らばかりさ。おれは大工、大工の音松。あんたらってなんなわけ? そんなでっけー蛤見たことねぇし、しかも人が出てくるなんてよ、驚いたのってなんのって。百薬の長審議会だぁ? それで? 酒の飲み方を指南してる? ほう、それでこんな宵の口から酒盛りしてるここへ来たのか。今日はめでてぇ日なんだよ。普段飲んでる濁り酒の中汲とはわけが違う諸白だぜ。飲むかい? 審議する? まぁまぁ、水差すなって、せっかくの上等な酒がまずくならぁ。
今日は陽気もいいし、桜も満開じゃねぇか、宴にゃぴったりだろ? 井戸端会議ならぬ井戸端宴会だぜ、ほらそこの床几が空いてるから、乗せてやらぁ。重てぇ貝だな、何人入ってるんだよ? なんかよくわかんねえけどすっげーな、あんたら。とりあえず飲んでけよ。え? それでも悪酔いは見逃せねぇって?
ああ、あいつらな。正体なくしてんのが植木屋んとこの梅吉、吐いてんのがぼて振りの竹三、泣いてやがんのが髪結いの菊也、みぃんなお蘭ちゃんにホの字だったんだからしょうがねぇ、見逃してやれよ。この宴会は大家の娘のお蘭ちゃんの祝言のおこぼれさ。大店だぜ、玉の輿だ。これができた若旦那でよ、幼馴染のあいつらなんか太刀打ちできねぇ相手さ。今日くらい酔い潰れて何もかも忘れてぇだろうよ。それは酒に失礼な飲み方だって? そんなわけあるめぇよ、自分じゃどうにもならねぇって時の辛さを紛らわすには酒はいい薬じゃねぇか、だから百薬って言うんだろ? ちげーのか? おいおい、皆して黙ってんなら、まぁ飲めよ。
 なんだよ? あいつらんとこ連れてけって? まだ説教する気なのかよ? あ、おい竹三、介抱してもらうついでにおれのかかぁに抱きつくんじゃねぇよ。菊也もいい加減泣き止め。梅吉、今度棟梁のとこのお咲ちゃんと見合いまとめてやらぁ。おお、夜もすっかり明けちまったじゃねぇか。朝陽が目に沁みらぁ。え? 夜明けは必ず来るでござーるだって? いいこと言うねぇ、ま、飲め飲め。

作品種類
雑誌掲載作品
修了制作 最優秀賞受賞作品
作品ジャンル
小説
   

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