日本放送作家協会主催 作家養成スクール
四十歳を超えた私。今日は出会いを求めて婚活パーティーに参加した。お馴染みの結果に帰路の星々だけが味方してくれるような寒い静かな夜。行きつけのお店では、待っていたかのように、いつものカウンター席が空いている。私は揚げ銀杏と本日の刺身盛り合わせを熱燗で味わった。
そんな時、一通のメールが届いた。
「今日は高校の同級生の結婚式でした。久しぶりの地元は少し小綺麗になっていて、当時暴れん坊だった俺たちも年相応に丸くなり、月並みですが、街並みも友達も歳をとったなと実感しました。」
宛先も、件名も記入されていないメールではあったが、当時付き合っていた彼からのメールである事は、一目で分かった。
もう二十年以上も前の事である。当時流行っていた歌詞の主人公のように、絵に描いたような青春を謳歌していた私。友達と海で遊んでいた時に、彼から声をかけられたのだ。
「よかったら手紙か電話を下さい」
彼から渡されたメモ紙には、住所と自宅の電話番号が書かれていた。
悩んだ挙句、私は一ヶ月経ってから手紙を書いた。
「もし、まだ覚えていたら電話を下さい。」
すぐに自宅の電話が鳴った。運悪く父親が電話に出てしまったが、その時、彼が同じサークルの連絡係と偽ってくれた。おかげで、怪しまれずに私と彼は電話で話す事ができた。それからも彼とは順調に交際した。
今、メールが来て急に彼が蘇ってきた。もう二十年も連絡を取っていなかったのに、なぜ今になって連絡が来たんだろうか。きっと当時の仲間と地元が、彼を二十年前の気持ちにタイムスリップさせてくれたのだろう。こんな夜は神様の存在を信じたくなるものです。
「もし、まだ覚えていたら電話を下さい。」
当時の文面のまま、私は彼に返信をした。その時、見知らぬ電話番号からワンコールの電話が鳴った。
電話はそれっきりだ。お互いに用事もなければ、この先の人生では他人同士だけれど、今日は久しぶりに良い夢が見られた気がした。
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